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新型コロナウイルスはどんなウイルス? ウイルスの構造や大きさ、感染の仕組みを解説

新型コロナウイルス感染症COVID-19は、ワクチンの供給も不安定で、新たな変異株が出てきています。感染を防ぐために正確な情報に基づいた対策を行うことの重要性は、ますます増してきています。今回はCOVID-19の原因ウイルスである、SARS-CoV2についての情報について解説していきたいと思います。

●COVID-19とはどんな病気?

まずは、COVID-19という疾患の疾患概念について見ていきましょう。

COIVD-19という言葉は、CO(corona:コロナ)VI(virus:ウイルス)D(Disease:病気)19(2019年)という略語を集めた言葉で、2019年に報告されたコロナウイルスが原因の疾患という意味です。原因ウイルスはSARS-CoV2という名前で、SARS(severe acute respiratory syndrome:重症急性呼吸器症候群)を引き起こすCoV(corona virus:コロナウイルス)の2種類目という意味になります。

コロナウイルスという種類のウイルスは50種類以上見つかっており、そのうち人に感染するウイルスが元々6種類見つかっていました。その中の4種類は普通の風邪の原因となるウイルスで、それに加えて2003年に流行したSARSの原因になったSARS-CoV、2012年にサウジアラビアで発生したMERS(中東呼吸器症候群)の原因ウイルスとなったMERS-CoVが今まで報告されていました。そこに7種類目の人に感染するコロナウイルスとして2019年に報告されたのが、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV2です。

COVID-19と普通の風邪の違いとしては、ウイルス名にもあるSARSを引き起こすということがあります。COVID-19に感染すると、まずは発熱や咳などの風邪症状が出ます。80%の人は、1週間程度で通常の風邪と変わらず改善しますが、20%の人では息苦しさなどの呼吸器症状や肺炎を引き起こし、入院が必要になります。その後さらに悪化すると、5%程度の症例で人工呼吸器が必要になり、死亡率は2%程度と言われています。

通常の風邪やインフルエンザと比較すると明らかに重症の肺炎を起こすリスクが高く、死亡率2%という数字も消して軽く見て良い数字ではありません。ワクチンを摂取していない80代以上の高齢者では10%程度の死亡率になります。また肺疾患や、糖尿病などの基礎疾患を持つ人が感染すると重症化のリスクが高く、普通の風邪やインフルエンザと同等に考えるのは危険であるという認識が必要です。

●新型コロナウイルスのサイズや構造、感染の仕組みは?

このSARS-CoV2についての細かい構造やサイズなどを見ていきましょう。

新型コロナウイルスのサイズは、80〜220nm(ナノメートル)程度と言われています。1nmは10億分の1メートルで、人細胞のおよそ165分の1、髪の毛のおよそ660分の1程度の大きさです。

SARS-CoV2を含むコロナウイルスの表面には多数のスパイクがあり、電子顕微鏡でみたスパイクが太陽の光冠(コロナ )に似ているということからコロナウイルスという名前が付けられています。

SARS-CoV2は、どのように体内に侵入してから感染していくのでしょうか。SARS-CoV2の感染の過程には、スパイクが重要な働きをしています。このスパイクがヒトの細胞の表面にあるACE2という酵素領域を含むタンパク質に結合して、細胞内に侵入します。このACE2は、体の中で血圧の上昇や炎症性サイトカインの産生に関わる経路である、レニンーアンギオテンシンーアルドステロン系(RAA系)を抑制する働きがあります。ウイルスの感染により、ACE2が枯渇するとRAA系に歯止めが効かなくなり、炎症性サイトカインの産生が増加して体の中で炎症が起こります。そうして重症の肺炎を引き起こすのです。

以上のように、COVID-19は体の中に侵入したウイルスに対して体が反応して風邪のような症状を起こす時期と、ウイルスの排除に手間取りそれによりACE2の枯渇が引き起こされ、免疫が暴走して重症化する時期があるのです。

●新型コロナウイルスの感染対策は?

基本は、通常の感染対策と同様でマスクと手洗いです。
マスクについて、「ウイルスは小さいから、マスクの繊維の間を通って出入りするのでは?」という疑問を持たれる方も多いです。

結論から言うとマスクは効果があります。確かにウイルスはマスクを通りますが、人の口から吐き出されたウイルスは唾液などの水分をまとって飛沫となって飛んでいます。この飛沫は5μm程度の大きさになっており、これはマスクで十分に捕らえることができます。

次に「3密」の回避が重要です。密閉、密集、密接の3つを指す言葉です。特に現在感染力の高い変異株が出ていますので3密全てが揃う環境でなくともどれか一つの密があれば感染の危険があります。自分の置かれている状況を考えて密を避ける習慣をつけましょう。

●まとめ

今回は、新型コロナウイルス感染症COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV2について見ていきました。今までに例のない大流行を引き起こしているウイルスですが、基本的な感染対策は通常のウイルスと大きく変わるものではありません。最新の情報をチェックして、感染対策をしっかりしていきましょう。

呼吸器内科医 扇谷知宏

呼吸器内科医呼吸器内科医

監修/扇谷知宏

所属/日本内科学会 日本呼吸器学会