新型コロナウイルス感染症COVID-19の影響で、我が国でも様々な活動が制限されています。
感染力の強い変異株が次々と出現しており、それに伴い感染者数も増加しているのが現状です。この新型コロナウイルスは感染しても、80%程度の人は風邪と同じような症状が出るだけで、1週間程度で回復します。しかしながら、一部の人は肺炎を引き起こし、重篤な状態になり、重症化が進むと死亡することも。感染した際の重症度は、個人差が大きいものとなっています。
そこで今回は、COVID-19の重症度の分類を確認し、どんな人が重症になりやすいのかについて解説していきたいと思います。
COVID-19の重症度は、きちんと定義されています。患者さんによっては「こんなに辛いのに軽症なんですか?」と驚かれる方や「自覚症状は無いんですけど、重症なんですか?」と言われる方もいらっしゃいます。
まずは、COVID-19の重症度について詳しく見ていきましょう。
COVID-19の重症度は、軽症、中等症I、中等症II、重症に分けられます。これらの重症度を分けるのは、酸素飽和度(SpO2)という数値と臨床症状です。SpO2は、血液の中にどれくらい酸素が存在するかを数値にしたもので、血液中にこれ以上溶けきれない酸素が存在する場合には100%となり、正常値は96%以上となります。これが下がってくると、酸素が足りないということになり、酸素投与が必要です。
次は、重症度について解説していきます。
軽症は、SpO2:96%以上で呼吸器の症状がない、もしくはあったとしても咳のみで呼吸困難が無い場合です。ただし、画像で明らかな肺炎がある場合は、中等症に分類されることもあります。風邪のような症状があるものの、肺炎などは起こしておらず、酸素はしっかり供給されている状態です。肺炎がなければ風邪のような症状が辛くても、この軽症に分類されます。軽症であれば、ほとんどの人は自然に軽快しますが、急速に病状が進行する可能性もあるので、リスクの高い人は入院の対象になることがあります。
中等症Iは、SpO2が94%~95%と正常よりわずかに下がり、呼吸困難や肺炎の所見が見られる状態です。酸素投与は必ずしも必要という状況ではありませんが、さらなる重症化に対応するためには入院が原則となります。
中等症IIは、SpO2が93%以下になり、呼吸不全がある状態です。酸素投与が必要であり、入院をして酸素投与を実施します。
重症は、中等症IIよりも呼吸状態が悪く、ICUに入室したり、人工呼吸器を装着する必要がある状態を言います。命の危険があり、集中治療を行っても救命できない可能性のある非常に危険な状況です。
COVID-19は、実際の重症度と自覚症状が合わないことも時々あり、辛いと思ったときには重症一歩手前ということもあります。風邪のような症状が出たり、呼吸困難等の症状が出たときには早く相談するようにしましょう。
COVID-19の重症化のリスク因子となっている項目ついてみていきましょう。
年齢が65歳以上の場合は、リスクとされています。ワクチン接種が始まる前の統計では、40代までは死亡率は0%、50代で0.1%、60代は0.7%と少ないですが、70代では3%、80代以上に至っては10.7%と高いです。ここから、60代の後半辺りから死亡リスクが高くなっていることがわかります。
基礎疾患について見ていきましょう。基礎疾患には、まず慢性閉塞性肺疾患、喫煙、など肺の疾患があります。呼吸状態が元々悪いときに感染すると、死亡率が高いということです。他にも悪性腫瘍、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、肥満、脂質異常症といった疾患が挙げられています。これらの疾患を持っていると免疫の機能が低下するため、重症化のリスクが上がってしまいます。病気ではありませんが、妊娠の後期でも重症化リスクが高くなるため注意が必要です。
重症化の対策として最も重要なのは、ワクチン接種です。
ワクチンを接種していると、感染したとしても重症化する可能性を大幅に減らすことができます。2回接種して一度抗体がつくと、体の免疫を担う細胞の一種であるB細胞が新型コロナウイルスの抗原を記憶したメモリーB細胞となり、次に感染した際に早期に抗体を産生することが可能です。抗体が減った後でも、何も打っていない状態より重症化リスクが少ないと考えられています。基礎疾患のある方は、その基礎疾患をしっかり治療し、生活習慣病にかからないように規則正しい生活を心がけることも大切です。
今回は、新型コロナウイルス感染症の重症度について解説していきました。重症化リスクのある方は、そのリスクを軽減するために生活を整え、ワクチン接種ができるようになったタイミングでなるべく早期に摂取することが重要です。