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新型コロナウイルスは他のウイルスと何が違う?重症化率や死亡率についても解説します。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックが長期化している状況です。感染力の強い変異株の出現により、感染者数の爆発的な増加も起こっています。ワクチンの接種や、新しい治療である抗体カクテル療法など、様々な対応策が打ち出されていますが、しばらくは行動制限がかかる状況が続くと予想されます。

しかし、なぜ毎年流行するインフルエンザなどのウイルスが存在するのに、新型コロナウイルス感染症COVID-19がここまで騒がれているのか疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。

今回は、新型コロナウイルス感染症COVID-19が他のウイルスとどのように違うのか、重症率や死亡率はどのくらいなのか、基本的なことからもう一度おさらいし、COVID-19のパンデミックで、なぜここまでの行動制限が敷かれるほどになっているのかについて、解説していきたいと思います。

●新型コロナウイルスに感染するとどのようなことが起こる?

まずは、新型コロナウイルスに感染すると、どのようなことが起こるのかについて見ていきたいと思います。

新型コロナウイルスは、ただの風邪だという人もいますが、どうなのでしょうか?
結論から言うと、感染者のうち80%程度の人にとっては、ただの風邪で終わります。しかし、残りの20%の人は、ただの風邪と判断するわけにはいきません。理由について、臨床経過を解説していきます。

COVID-19に感染すると、はじめの1週間程度は風邪のような症状が出ます。80%の人はそのまま治癒しますが、20%の方は呼吸困難、咳や痰、肺炎症状が悪くなり、入院が必要です。このあたりから酸素投与が必要になってきます。更に発症10日あたりから重症化することがあり、そうなると高濃度の酸素の投与が必要となり、それでも管理できない場合には人工呼吸器や人工心肺ECMOが必要です。

日本における2020年7月7日までに登録されたCOVID-19入院患者2,638人を解析したところ、患者の年齢中央値は56でした。入院が必要になった患者さんのうち、酸素投与が必要になったのは3%、人工呼吸器が必要になった患者さんは9%、死亡した患者さんは7.5%でした。重症化や死亡のリスクは、年齢や基礎疾患(糖尿病、悪性腫瘍、肺の病気など)などによって変わります。高齢の方や基礎疾患をお持ちの方は、特に注意が必要です。

●新型コロナウイルスは他のウイルス感染症と何が違う?

新型コロナウイルスは、インフルエンザなどの既にある季節性のウイルス感染症と、どのような点が違うのかについて見ていきましょう。

COVID-19がインフルエンザと違う点として、

  • •無症状の時期にウイルスの排出がある
  • •潜伏期間が長い
  • •感染力が高い
  • •症状消失までの期間が長い
  • •肺炎になりやすく重症化率が高い
  • •死亡率が高い
  • •後遺症が残りやすいといったものがあります。

感染が広がりやすくなる特徴として①②③が、症状が重症になりやすい特徴として④⑤⑥⑦があります。

まず、感染が広がりやすくなる特徴について解説していきます。

通常インフルエンザなどの感染症は、潜伏期間が短いため感染してすぐに症状がでます。症状が出たら、すぐに感染を拡大させないための対策を行うことができますが、COVID-19は潜伏期間が長く、症状が出る前から周りの人に感染させる可能性があり、気づいたときには複数の人に感染をさせているという状況になりやすいです。感染力も高いので感染を抑え込むのが難しいため、世界的に流行しています。

次に重症化しやすいということに関連した特徴ですが、まず死亡率が異なります。インフルエンザウイルスの感染症は、すでにワクチンが十分行き渡っていますし、治療法もエビデンスの確立したものがあります。また、インフルエンザに感染して死亡した例の殆どは、元々ある持病が悪化したものです。COVID-19は、COVID-19によって引き起こされた肺炎で死亡しています。つまり、他の感染症とは異なり、COVID-19は直接人を死亡させることのできるウイルスなのです。

運良く重症化しなかったとしても、後遺症が残りやすいことにも注意が必要です。軽症で済んだとしても、咳が120日以上残った症例なども確認されていますし、嗅覚障害や味覚障害が長く続くということもあります。「かかっても死なないから」と軽く見ていると、思わぬ後遺症に悩む可能性があるので注意が必要です。

●新型コロナウイルスの治療は?

COVID-19の病気は、大きく2つに分けられます。発症から1週間までは、ウイルスの活動により症状が出る期間で、その後ウイルスに対する免疫が暴走して自分の肺を攻撃してしまい、肺炎になる期間です。

まず感染初期のウイルスの活動している時期には、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬を使用します。また最近になって、抗体を体に取り入れてウイルスを攻撃する、抗体カクテル療法も使用できるようになっています。ウイルスが体の中にいる時間を短くして、後に起こる免疫の暴走による重症化を防ぐのが、この治療の目的です。

ウイルス感染が長期になると、ウイルスが過剰な免疫を抑制する作用のある酵素を消費してしまったり、免疫や炎症に関連する物質であるサイトカインを増幅させる回路によって、体の中で免疫が暴走してしまいます。その暴走を止めるために、炎症を抑えるステロイドやサイトカインの働きを抑えるトシリズマブなどの薬が使われます。簡単に言うと、ウイルスの活動を抑える抗ウイルス薬と、ウイルスによって暴走した免疫を落ち着かせる免疫調整剤が治療の柱です。

●まとめ

今回は、COVID-19が他のウイルス感染症との違いについて見ていきました。COVID-19は、重症化率や致死率の高い感染症であり、決して軽く見て良いものではありません。今後も引き続き感染対策を徹底していく必要があります。