新型コロナウイルス感染症COVID−19の流行により、生活様式を大きく変更せざるを得なくなりました。人との接触を避けなければならず、外にも行きにくくなっています。しかし、まだまだこのパンデミックは収束の目処が立っておらず、我国では第5波が襲来している状況です。
感染力が強くなった変異株である、デルタ株の増加によりますます感染対策を徹底していく必要があります。そんな中、患者さんから空調の管理や空気清浄機の利用について質問をいただくことが多くあります。
本記事では基本的な感染対策をおさらいし、その後部屋の環境管理についてフォーカスをあてて解説をしていきます。
まずは、新型コロナウイルスに感染しないための基本的な対策について見ていきましょう。
新型コロナウイルスに限らず、感染症の対策の基本は、人との接触を出来る限り避ける、マスクの着用を徹底する、消毒を徹底するというものになります。
人との接触をさけることについて、これはいわゆる「3密」の回避が重要です。3密は密閉、密集、密接のことを指します。感染力の強いデルタ株が増加しているため、3密全てが揃う環境でなくても、どれか一つの密でも感染の危険があるため注意が必要です。
マスクの着用についても見ていきましょう。マスクの着用によって、吸い込み飛沫量や吐き出し飛沫量を大幅に減らすことができます。特に不織布マスクの効果が最も高く、吐き出し飛沫量は80%カット、吸い込み飛沫量は70%カットすることが可能です。人と会話するときはもちろんのこと、外に出る時もマスクの着用を徹底しましょう。
次に消毒です。ウイルスの付着したものを触り、その手で顔などを触ると、目・鼻・口などの粘膜からウイルスが侵入してしまいます。外出時は、手指の消毒をこまめに行いましょう。家の中でもドアノブや取手など、よく触るものはこまめに消毒しましょう。
ウイルスに感染しにくいようにするには、どのように空調を管理したら良いのか見ていきましょう。
一般的にウイルスは、乾燥した低温の環境で感染力を増すと言われています。通常の風邪症症候群も、空気が乾燥して気温の低い冬に多いです。なぜこのような環境では、感染する可能性が高くなるのでしょうか。
まず気温についてですが、気温が低くなるとそれにさらされるヒトの体温も低くなります。体が冷えると抵抗力が弱まりますので、体内にウイルスが入ったときに感染が成立する可能性が高まります。また、新型コロナウイルスは気温により感染力が維持される期間が長くなるということが指摘されており、37℃では感染力維持は1日程度ですが、22℃では4日間です。クーラーの効きすぎや、冬に部屋を寒いままにするのはあまり得策ではないようです。
次に、湿度について見ていきましょう。空気中にウイルス含む飛沫が飛んだとき、湿度がある程度あると飛沫はその重さからすぐに地面に落ちる一方で、空気が乾燥していると、飛沫に含まれる水分が蒸発し飛沫が軽くなり、より長い時間空中に滞在します。また、空気が乾燥すると粘膜の乾燥の影響もあり、感染に対する防御力も下がってしまいます。そのため、空気が乾燥していると、感染の可能性は上がると言われているのです。
以上のことを考慮すると、室温は25℃以上に設定し、湿度は50%前後を保つようにするのが感染対策としては有効と考えられるでしょう。
空調の設定と一緒に質問が多いのは、室内環境の調整方法としての空気清浄機の使用方法があります。空気清浄機の中には、マイナスイオンによりウイルスを不活化するという謳い文句の商品などもありますが、まだその効果については十分に検証した研究や論文は少ないのが現状です。
イオンによるウイルスの不活化を検証した研究では、ウイルスの不活化が確認はされているものの、狭く条件の整った実験室での検証であるため実際の部屋で効果が得られるかは、まだわかりません。また、ウイルスのような小さな粒子を補足するには非常に高性能なフィルターが必要になるため、単に空気清浄機をつければ安心とまでは言えず、詳細な商品説明をみてから導入についての検討をする必要があるでしょう。
室内のウイルス量を減らすのであれば、換気が簡単かつコストがかかりません。窓を開けて換気扇をつけておくことで、十分に換気はできます。窓を開ける時は、可能であれば向かい合う複数の窓を開けて空気の流れを利用しましょう。換気と並行して、こまめに触る場所などの消毒を行い、ウイルスが体に触れる機会を少なくすることが感染対策につながります。
今回は、COVID−19にかからないように部屋の環境をどのように設定するかについて解説しました。感染しにくい環境のためには、温度を下げすぎない、空気の乾燥を防ぐ、定期的な換気を行う、といった対策があります。今一度自分の住んでいる環境を整えて、このパンデミックを乗り越えましょう。