2019年に中国の武漢で最初の症例が報告されてから、世界中で長期間に渡って猛威を奮っている新型コロナウイルス感染症COVID-19。感染者は、増えたり落ち着いたりを繰り返していますが、現在第5波が襲来しており、過去最多の感染者数を記録しています。感染力の高い変異株も出てきており、より一層の対策が必要です。
そんなCOVID-19ですが、発症しても症状が無かったという患者さんの声もあります。また、「COVID-19に感染してから症状が出現するまでの潜伏期間も人へ感染させるのか」という質問も沢山頂きます。
そこで今回は、COVID-19の症状についておさらいし、無症状の期間に他人に感染させる可能性があるのかについて、見ていきたいと思います。
まずはCOVID-19に感染したとき、どのような症状が出るのかについて確認していきましょう。COIVD-19に感染しても、しばらくの間は症状が出ません。この期間は潜伏期間と呼ばれており、潜伏期間は人によって差がありますが1~14日で、平均すると5日程度です。潜伏期間が終わって発症すると、初めは発熱や咳といった症状が出ます。この時点では、普通の風邪と変わりません。風邪のような症状はおおよそ1週間程度続きますが、80%程度の人はここで快方に向かい、治癒していきます。残り20%程度の人は、さらに症状が強くなり、肺炎を引き起こします。これによって呼吸困難が引き起こされ、場合によっては酸素投与が必要です。肺炎がひどくて酸素投与のみでは管理しきれない場合には、人工呼吸器を用いて回復するまで管理する必要があります。それでも管理不可能である場合には、人工心肺であるECMOを使用して管理します。ECMOを用いても状態が改善しない場合やECMOの適応にならない場合には、死に至ることも。ワクチン接種が進む前の段階で死に至るのは、おおよそ2~3%程度となっています。
症状が出る前の潜伏期間の間に、ウイルスを人へ感染させる可能性があるのかについて調べた研究を見ていきましょう。
JAMAという、世界でトップ5に入る権威のある医学雑誌に掲載された研究があります。その研究は台湾で行われ、PCR陽性でCOVID-19と診断された100人とその濃厚接触者2,761人を対象にしたもので、COVID-19がいつから人に感染させるかを調べたという内容です。研究では、COVID-19は発症前4日から発症後5日まで人に感染させるリスクがあると結論づけられています。つまり症状が出ていない潜伏期間であっても、人に感染させる可能性は十分にあるということになります。
次に感染しても完全に無症状の人はいるのか、という疑問について見ていきましょう。
様々な研究の結果から、おおよそ20%程度といわれています。2020年の年末にBMJという医学雑誌(こちらも世界のトップ5に入る権威のある雑誌)に掲載された論文によると、無症状者と有症状者を比較すると無症状者が他の人を感染させる力は、有症状者と比較して低いということが発表されています
しかし、無症状者が全く感染させないというわけではなく、症状がないために気がつかずに濃厚接触を繰り返すと、無症状者であっても感染のリスクは高いです。やはり、日頃の感染対策は重要であると言えるでしょう。
発症した人の濃厚接触者になった場合には、保健所から連絡が来る場合があります。そのようなときは、保健所の指示に従い、隔離やPCR検査などを実施しましょう。
自分に症状があってCOVID-19かもしれないという場合は、まず身近な医療機関に連絡をします。医療機関での受診を考える際には、必ず事前に電話連絡をして、いつ、どのように受診するか確認してから向かいましょう。飛び込み受診の場合、待ち時間が長時間になったり、場合によっては当日に対応してもらえないことがありますので極力避けてください。
知っている医療機関がない場合や夜間で休みの場合は、都道府県ごとに設置されているCOVID-19の相談窓口に連絡してください。各都道府県のホームページで窓口が公表されています。また自分がCOVID-19かもしれないと思ったら、可能な限り人との接触は避けるようにしてください。家族と共同で使うものは無くし、他の人と接触しないようにするのも大切です。
今回は、無症状の状態のCOVID-19の患者さんが他の人に感染をさせる可能性があるのかについて解説していきました。無症状であっても人に感染させないと言い切ることはできないため、感染対策をしっかりと行い、感染の可能性を少しでも減らしていきましょう。