COVID-19の流行が長期間になり、日本でも何度も大規模な感染者の増加がおこっている状態です。特にデルタ株の出現に端を発したと考えられる第5波の流行は、今までとは桁違いの流行を見せ、ピーク時には日本国内で1日に2万人を超える感染者を出しました。
この第5波が収束してきて、緊急事態宣言も解除になりました。しかし、まだこれでCOVID-19の流行が終わるかというと楽観はできない状況です。新たな変異株の日本上陸も報告されており、これが新たな流行の引き金になるかもしれません。本当に終息するまでしっかりとした知識を持って、感染対策を徹底しましょう。
今回は、そんなCOVID-19の症状についておさらいし、感染したときにどのようなことが起こるのかについて解説していきます。
「COVID−19はただの風邪だ!」という主張をする、少し過激な人がニュースで話題になっていたこともありました。COVID-19は、80%の人にとってはただの風邪で終わります。つまり、初期症状は風邪とほぼ変わらないのです。しかし、COVID-19を日々診療している医師としては、若年者でそのように思う人もいるのはわかるのですが、ただの風邪とは大きく違う部分がいくつもあるというのが正直な感想です。
初期は発熱や咳、味覚症状や嗅覚症状といった症状が出現し、約80%の人はこの段階までで1週間程度で改善していきます。このとき体の中では、体内に侵入したコロナウイルスに免疫が反応している状態です。ウイルスとの戦いを有利にするために体温を上げたり、ウイルスを排除するために咳がでます。普通の風邪と違うところとしては、味覚や嗅覚を感じるための細胞がウイルスの感染によって破壊されてしまい、味覚や嗅覚がなくなる店です。
先述したように、「ただの風邪」の段階でコロナウイルスの症状が終わらないときに、体の中で起こっていることについて見ていきましょう。コロナウイルスは、細胞の中に侵入するためにACE2という細胞表面に存在する酵素に結合します。つまり、細胞内に侵入するときに、このACE2が消費されるのです。ACE2はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)という経路を抑制する働きがあり、血圧を上げたり、免疫細胞の活動や炎症に関連するサイトカインという物質の生産を亢進する働きもあります。
コロナウイルスに感染するとウイルスはすぐに排除されず、ACE2が枯渇するとRAA系が働き、サイトカインが多く産生されます。これに加えて、他の増幅経路も関与してサイトカインストームというサイトカインの活性が、大幅に上がった状態が作り出されます。そして、それによって炎症が生じたり、自分の免疫細胞が自分の肺を攻撃してしまうことによって肺炎が生じるのです。
若干専門的な話になりましたが、かいつまんで説明すると、コロナウイルスに感染したとしても、ウイルスがすぐに排除されれば風邪で済むが、排除に手間取っていると炎症に関与するサイトカインの産生を抑えている酵素が枯渇して、その結果肺炎が起こるのです。
肺炎が起こった20%の人は呼吸苦などの症状が出現し、入院が必要になります。約5%の人は重症化が進み、人工呼吸器管理や集中治療室への入室が必要です。そして、約3%程度が亡くなってしまう恐れがあります。
また、免疫力が低いとウイルスの排除に時間がかかるため、重症化リスクが高くなります。
免疫力が低下する要因としては、高齢、糖尿病、肥満などの生活習慣に関連する疾患、慢性の腎臓病や心疾患などがあります。肺炎を起こす病気なので、肺の状態が悪いと重症化リスクが高まりますので、喫煙や、肺気腫などもリスク因子となります。
まず感染対策は、基本的なウイルスの感染対策をしっかり行うことが重要です。3密(密閉、密集、密接)を避けて、マスクの着用を徹底し、こまめな手指の消毒を行う。これを日々の生活の中で習慣として実行しましょう。
ワクチンの接種も有効です。デルタ株が出現して感染を防ぐ効果は下がったものの、重症化を防ぐと言う点では、現時点でも非常に優れた効果を示します。特に感染リスク因子のある方は早めの接種がお勧めです。リスク因子があり、それが治療可能な方は治療をしておくことで重症化が防げる可能性があります。健康診断で異常を指摘された人は、放置せずに治療をしておきましょう。
今回はCOVID-19の症状について説明していきました。普通の風邪とは異なる特徴を持つのがCOVID-19で、感染すると重症化や死亡のリスクのある危険な感染症です。最新のコロナウイルス情報を確認しつつ、気を緩めずに感染対策を続けていきましょう。