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新型コロナウイルスの症状や潜伏期間についておさらい感染したら何が起きるのかを知ろう

新型コロナウイルスCOVID-19の世界的なパンデミックが発生してから1年以上経ちました。ワクチンも開発され、一刻も早く多くの国民に接種が進むことが望まれます。今回のパンデミックはまだまだ、収束の目処は立っていない状況で、感染せずに乗り切るためにしっかりと感染対策をしていく必要があります。

今回はCOVID-19に罹患すると、どのような症状が出るのか、どのくらいの割合で重症化するのか、また潜伏期はどれくらいなのかなど、この1年間で新たに分かったこともふくめて解説していきます。

●新型コロナウイルスの症状

COVID -19の症状を見ていきましょう。最も多く出る症状としては、発熱や空咳、倦怠感があります。これらの症状よりは頻度が減りますが、喉の痛みなども出現します。COVID -19は基本的には気道の感染なので気道症状がメインで出てくることが多いのですが、下痢などの消化器症状や結膜炎、頭痛などの症状もあります。また、味覚障害や嗅覚障害の出現も多く報告されており、比較的多彩な臨床像を呈することがわかっています。

しかしながら、どの症状も普通の風邪やインフルエンザなどにも見られる非特異的な症状なので、これらの症状だけでは風邪やインフルエンザと区別するのは困難です。

重症化した場合の症状としては呼吸の苦しさや息切れ、胸の痛み、言語障害や運動障害といったものがあります。これらの症状が出現した場合は危険な状況なので、すぐに発熱外来を置いている医療機関を受診する必要があります。直接来院すると、待ち時間が非常に長くなったり、そもそも発熱に対応することができない可能性があるので、まずは身近な医療機関に電話で相談して、指示に従うのが安全です。

●潜伏期間や人にうつす心配のある期間は?

新型コロナウイルスの潜伏期や、人に感染させる可能性のある期間を見ていきましょう。
まず潜伏期間ですが、ウイルスに曝露してから発症するまでの期間はWHOの報告によると1-14日の範囲と言われており、平均すると5-6日程度になります。

次にCOVD -19に感染した際に、他の人にうつしてしまう心配がある期間について解説していきます。

COVID-19は、発症する2-3日前には他の人に感染しうる状態になっていることがわかっています。これは他のウイルスとは異なった特徴です。感染すると症状が出る前から他人にうつしてしまう可能性があるということで、非常に感染の連鎖が起こりやすく、これが今のパンデミックがなかなか収束しない原因の一つにもなっています。潜伏期間は発症してからはおよそ7-10日間です。この期間がもとになって濃厚接触者の隔離期間が定まっているため14日間の隔離になることが多いのです。

また症状が出た時には、他人にうつす心配があるということがわかっているので、風邪の症状が少しでも現れたら家族との接触を避けるようにすることが大切です。また家庭内で供用しているもの(タオルなど直接体に触れるものなど)がある場合は、これも別々に使用する必要があります。特に高齢者は重症化や死亡に至る割合が若年者と比べて高いため、注意が必要です。

●新型コロナにかかったらどうなる?

COVID -19に感染した場合、どのようなことが起こるのかについても見ていきましょう。
はじめに症状の項目で触れたように、初期の症状としては普通の風邪と同様の症状が出てきます。軽症のまま経過する人がほとんどですが、一部の人は重症化し、場合によっては死に至ることもあります。ではどれくらいの割合で、重症化や死亡などの重篤な状態になるのでしょうか。

中国の4万例のCOVID-19患者を調べた研究があります。この研究によると80%の患者は、軽症のまま入院を必要とすることなく回復していました。残りの20%は入院を必要とする状況になります。重症化するまでの期間はおおよそ1週間程度でした。さらにCOVID-19患者の5%程度が重度の呼吸不全を発症し、集中治療室への入室や人工呼吸管理を必要とします。そして2-3%は死亡します。ちなみに季節性のインフルエンザの死亡率は0.1%程度であり、明らかにインフルエンザよりも死亡率が高いことがわかります。

COVID-19の重症化・死亡のリスクは、楽天的に考えられるようなものではありません。しっかりと感染対策を続けることがとても重要です。また、高齢者では死亡率が非常に高く、80歳以上では15%との報告もあります。他にも肺の疾患のある人、肥満や糖尿病など生活習慣病にかかっている人、喫煙者では重症化や死亡のリスクが明らかに高くなります。これらのリスクファクターのある方は特に気を付けてください。

COVID -19から回復した場合にも、後遺症に悩まされるケースも多く報告されています。我が国での報告では回復者63人を調査したところ、発症60日後でも症状が残っている人が多くみられました。内訳は嗅覚障害(19.4%)、呼吸困難(17.5%)、倦怠感(15.9%)、咳嗽(7.9%)、味覚障害 (4.8%) となっています。さらに、120日後にも呼吸困難(11.1%)、嗅覚障害(9.7%)、倦怠感(9.5%)、咳嗽(6.3%)、味覚異常(1.7%)といった症状が見られています。感染することで長期間後遺症に悩まされる人も多く、より注意が必要であると考えられます。

●まとめ

COVID-19に感染するとどのようなことが起こるのかをみていきました。COVID-19は潜伏期にも感染力のあるウイルスでしかも致死率や後遺症を残す割合も多く十分な対策の必要な感染症です。ワクチンの接種がすすみ、収束に向かうまで引き続き対策を怠らないことが重要と言えるでしょう。

呼吸器内科医 扇谷知宏

呼吸器内科医呼吸器内科医

監修/扇谷知宏

所属/日本内科学会 日本呼吸器学会