HOME> 【マスクの素材】ウレタン・ガーゼ・不織布に違いはある?

【マスクの素材】ウレタン・ガーゼ・不織布に違いはある?

新形コロナウイルス感染症COVID -19の流行が長期になっています。収束の目処はまだまだ立たず、現在第4波とも言える状態になっています。一方でワクチンの接種が徐々に始まってきており、その効果が期待されています。感染しないように十分に対策を行い、このパンデミックを乗り越えたいところです。

そこで今回はCOVID -19予防の基本の一つであるマスクについて解説していきたいと思います。マスクの素材によって違いはあるのでしょうか?

●マスクの予防効果は?

マスクの素材による違いを見ていく前にまず、そもそもマスクに本当に予防効果があるのかという疑問について解説をしていきたいと思います。

COVID -19が話題になった際には「ウイルスは小さいのでマスクを通り抜けてしまう」という説もあり、マスクの効果について疑問視する声も認められました。実際どうなのでしょう。

ウイルスは乾燥した状態で、ウイルスのみで飛ぶことはなく、唾液などの水分をまとって飛沫として体外に排出されますので、実際のウイルスの大きさより大きい状態で飛散しています。そのため、その大きさから考えるとマスクは十分に効果的と考えられます。

マスクの飛沫の吸い込み・吐き出しを抑制する効果については理化学研究所が複数の大学と共同で行った研究があり、マスクをしたときの飛沫の飛び方をスーパーコンピューター「富岳」を用いてシミュレーションしています。その結果、不織布のマスクをしているとマスクをしていない状態と比較して、吐き出し飛沫量を80%、吸い込み飛沫量を70%減らすことがわかりました。他に多くの研究でマスクは感染症にかかる可能性を有意に低下させるという結果が出ています。

マスクには予防効果はありますので、パンデミックが収束するまではやはり欠かさずに装着した方が良いと思われます。

●繰り返し洗って使えるマスクの素材は?

最も一般的に使用されている不織布のマスクは使い捨てですが、洗って繰り返し使えるマスクもあります。洗って繰り返し使えるマスクは、ガーゼマスクやウレタンマスク 、布マスクといったものがあります。購入時にパッケージの表示を確認すると、洗濯ができることが明記してあります。また、目安として何回まで洗濯して良いかも書かれていることが多いので確認しておきましょう。

自作品などの場合は使用した布の種類によって寿命も変わります。ポイントしては、形状が崩れてしまうと顔とのフィッティンがうまくいかなくなり、隙間が生じて感染防御機能が落ちてしまいます。型崩れには十分に注意し、形状が崩れてきたら新しいものにすぐに変える必要があります。自作マスクは愛着がわくこともあり、長く使いたいという気持ちもあるかとは思いますが、基本的にマスクは消耗品なので形状の崩れや布の毛羽立ち、ゴムの伸びなどがあればすぐに新しいものに変えましょう。肝心の感染予防効果が落ちては本末転倒になってしまいます。

繰り返し使えるマスクのポイントとして、洗って繰り返し使う場合には1日1回は洗濯することと、手洗いする場合には洗濯前後にしっかりと手洗いをすることが重要です。
マスクには内側にも外側にもウイルスが付着している可能性がありますので、着用したものを部屋に無防備に置いておくと、マスクに付着したウイルスを部屋に持ち込んでしまう可能性があります。正しい使用回数と洗い方を心がけることが重要です。

●マスクの素材と予防効果

マスクの素材によって、性能に差があるのかを見ていきましょう。先述の理化学研究所が複数の大学と共同で行ったスーパーコンピューター「富岳」を使用したシミュレーションでは、不織布マスクの他に布マスク、ウレタンマスクの3種類の素材のマスクの性能が検証されています。その結果、マスクをしていない時の吸い込み飛沫と吐き出し飛沫をそれぞれ100%とすると、不織布マスクは吐き出し飛沫量20%、吸い込み飛沫量30%に抑えらました。

その他の素材を見ていくと、布マスクは吐き出し飛末量は18-34%と抑えられるものの、吸い込み飛沫量は55-65%と不織布マスクに比べてやや多くなります。ウレタンマスクでは吸い込み飛末量50%、吐き出し飛沫量60-70%と性能が不織布マスクよりも劣るという結果になりました。マスクの性能としては、使い捨ての不織布のマスクが最も良いということになります。一部の免疫力の低下した患者などが入院している病院の病棟内では、ウレタンマスクの着用では入室できないことがあるなど、ウレタンマスクよりも不織布マスクの使用の方が推奨されている状況です。だたし、ウレタンマスクは通気性が良く、不織布マスクでは肌のトラブルが頻発する方やアレルギー体質の方にとっては必要なマスクです。

ウレタンマスクを使用される方は、状況に応じて使い分けられるように不織布マスクも一緒に持ち歩くなどの工夫を行いましょう。適切な予防を心がければ、ウレタンマスクも予防に十分に寄与すると考えられます。自分の体質や周りの環境に合わせて無理なくマスク着用を続けましょう。

●まとめ

今回はマスクの素材とその性能について見ていきました。基本的に使い捨ての不織布マスクが最も高性能ですが、状況によって他のマスクが必要になる人もいます。それぞれの事情を理解しつつ、自分にあったマスクを使用し、無理なく予防を続けてこのパンデミックを乗り越えましょう。

呼吸器内科医 扇谷知宏

呼吸器内科医呼吸器内科医

監修/扇谷知宏

所属/日本内科学会 日本呼吸器学会