HOME> サージカルマスクについて解説 普通のマスクとは違う?正しい付け方は?

サージカルマスクについて解説 普通のマスクとは違う?正しい付け方は?

世界中で猛威を奮っている新型コロナウイルス感染症COVID-19ですが、本邦での流行も収束の目処が立っていない状況です。自分や家族・友人が感染することを避けるために、十分な対策をまだまだ続けていく必要があります。

マスクを着用することも、すっかり日常の習慣となりましたね。本日はそのマスクについて解説していきます。マスクにも色々種類があり、私が診察している患者さんで「サージカルマスクというのは、普通のマスクとは違うのですか?」と質問してくださる方が時々いらっしゃいます。今回はマスクの種類について言及しつつ、マスクの種類や正しい着用の仕方などについて説明していきたいと思います。

●新型コロナウイルスCOVID−19の対策にマスクの着用は有効なのか?

まずマスクの種類や着用方法について解説する前に、そもそもマスクを着用することがCOVID-19の対策に有効なのかについて解説していきたいと思います。ここでは一般的な不織布のマスクについて解説していきます。不織布とは繊維を織らずに絡み合わせたシート状の布です。繊維を絡み合わせたもので通気性があるため当然、繊維と繊維の隙間があります。ウイルスはこの隙間を十分に通れるくらい小さいので、COVID-19の流行が始まった当初には、マスクの効果を疑問視する声もありました。しかし、ウイルスが空気中を移動するときはウイルスだけが単体で飛んでいるわけではなく、ウイルスを排出した人の唾液と一緒に飛沫として飛んでいるのです。不織布マスクでこの飛沫は十分にキャッチすることができるので、結論としてマスクは十分に感染対策に貢献することがわかっています。

最も権威のある医学論文誌の一つである、Lancetに2020年6月27日に掲載された論文があります。16か国で行われた172の観察研究を集めて統計をとる、メタアナリシスという解析を行った研究で以下のことがわかっています。

1m以上の距離を取っているのと、1m以下よりの距離しかない場合より、明らかにウイルスの伝播が少ないこと、フェイスマスクを使用しているとしていないのと比較して感染の可能性が明らかに低下すること、目の保護が感染の現象に関連すること。

特にマスクに関しては、2647人を調査してオッズ比(起こる確率と起こらない確率が同じときにオッズの値は1となり、1よりも大きいと事象が起こりやすい、小さいと起こりにくいことを表します。)が0.15と高い予防効果が示されています。

また、理化学研究所が複数の大学と共同で行った研究があり、マスクをしたときの飛沫の飛び方をスーパーコンピューター「富岳」を用いてシミュレーションしています。その結果、不織布のマスクをしていれば、マスクをしていない状態と比較して吐き出し飛沫量を80%、吸い込み飛沫量を70%減らすことがわかりました。

これらの研究の結果から、明らかにマスクは感染症の対策に有効であることがわかります。外出の際はマスクを着用するようにしましょう。

●サージカルマスクや医療用マスクについて解説医療用マスクと普通のマスクの違いは?

まずサージカルマスクについて解説します。サージカルマスクは医療従事者が医療業務に従事する際に、自身や周囲の人を感染から守るために着床するマスクです。不織布でできているマスクがほとんどですが、家庭用のものよりフィルターの目が細かいものが使われています。ただ海外では一定の規格がありますが、日本ではサージカルマスクの定義を細かく定めた規格は存在しません。米国の医療用マスクの規格に沿ったものが基本的にはサージカルマスクとみなされることが多いです。

また医療者が着用するマスクで、よりフィルターが細かく、細かい粒子をキャッチできるマスクであるN95マスクがあります。N95とは塩化ナトリウム(空力学的質量径0.3μm)の捕集効率試験で95%以上捕集することを意味しています。通常のマスクだと5μmの粒子をキャッチするので、随分細かいものをとらえることができることがわかるかと思います。このマスクは、結核などの空気感染を引き起こす疾患の診療をするときに医療従事者が着用するもので、フィルターが細かいことから、着用時は呼吸がしにくくなります。一般の方が日常的につけるのは不便です。現在家庭用の不織布マスクも十分な性能があるため、家庭用マスクを着用することで十分な予防効果が得られます。

●知らないと感染リスク上昇!マスクの正しい付け方

マスクの付け方の間違いとして多いものとして、まずマスクの表裏の間違いがあります、表裏の見分けかたはマスクのプリーツ(ヒダ)を見ます。ノーズピース(鼻にあたる部分)を上にしたときに、プリーツが下向きになっている方が表(自分から見て外側)になります。

表裏を確認したらマスクを顔に当てて、顎の下まで覆うようにマスクのプリーツを伸ばして耳紐をかけて着用します。この時に鼻が出た状態でつけていると、吸い込む飛沫の量を減らす効果が大きく低下するので注意してください。またノーズピースはしっかりと鼻の形にフィットさせましょう。

着用の前にマスクのサイズが合っていない場合も注意が必要です。着用した時に耳紐が緩すぎる場合は、十分な効果が得られないことがあります。自分の顔に合ったサイズのマスクを着用しましょう。

●まとめ

今回はサージカルマスクについて解説しました。家庭用のマスクも十分に予防効果があることが最近の研究で明らかになってきています。まずは、正しい着用方法でマスクを毎日身につけるように心がけましょう。

呼吸器内科医 扇谷知宏

呼吸器内科医呼吸器内科医

監修/扇谷知宏

所属/日本内科学会 日本呼吸器学会