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新型コロナウイルスに換気は有効?空気清浄機は?

COVID-19が世界中で流行しており、我が国の事態も深刻化し続けています。現在第4波が襲来しており、3度目の緊急事態宣言が出ています。この状況の中でワクチン接種も始まっており、一刻も早くワクチンの接種が進んで、収束することを願うばかりです。我々国民一人一人がCOVID-19に感染しない、そして感染させないように行動することが以前にも増して重要になっていると言えるでしょう。今回は、COVID-19の感染経路と予防対策としての空気清浄機や換気について見ていきます。

●新型コロナウイルスの感染経路を解説

まずは、COVID-19の感染経路について見ていきましょう。COVID-19の感染経路は飛沫感染・接触感染・空気感染といったものが存在します。

飛沫感染についてですが、これはCOVID-19感染症の主体となる感染経路で、感染した人が会話したり・咳をしたりした際に生じる唾液などの飛沫に含まれたウイルスが、他の人の口・鼻・目に入ることで感染するものです。

また、ウイルスが付着したものを触って、その手で口・鼻・目を触ることでも感染することがありそれを接触感染と言います。

換気の悪い場所では空気感染も起こります。飛沫感染と比較してどのような違いがあるのでしょうか。

空気感染は、唾液などの水分を含む飛沫が感染の元になります。飛沫は水分を含むので、空気より重く、すぐに落下します。この飛沫の水分が蒸発して無くなったものを飛沫核といい、水分がなくなった分小さく軽くなるので長時間空気中を漂うのです。これを吸い込むと、空気感染となります。飛沫はマスクでも十分に防御できる大きさですが、飛沫核は小さすぎてマスクを通り抜けてしまいます。飛沫核を吸い込まないように換気を行い、日頃から手洗いやうがいをすることも非常に重要です。

●新型コロナウイルスの対策として空気清浄機は有効化?

コロナについて診療をしていると、患者さんから時々「空気清浄機はコロナウイルスに対して有効なのでしょうか」との質問を受けることがあります。「空気清浄機の有効性についてはまだ十分な研究がなく、有効と断言することはできません」というのが、今のところの回答になります。閉め切った部屋で空気清浄機を使うよりも、窓を開けて換気を行う方が確実な予防策であると言えそうです。

殺菌効果を謳った空気清浄機も存在します。通常の生活空間のような広い空間における使用では、あまり殺菌効果は期待できない可能性が高いが、極めて狭い空間でのある種の細菌という限定的な対象に対しては殺菌作用が見られたとのことです。しかし、そもそもウイルスと細菌は全く別のものであり、コロナウイルスなどのウイルスに有効かどうかについて十分な研究はなされていません。ウイルス対策への有効性を謳う空気清浄機の導入を検討されている方は、根拠となった新しい研究成果について確認することが賢明と言えるでしょう。

コロナウイルス以外への一定の有効性が示されているものとして、HPEA (High Efficiency Particulate Air Filter)を用いたものがあり、こちらは有効性についての報告を確認したいところです。また、令和2年5月に奈良医科大学でオゾンによる新型コロナウイルス不活化の実験が行われています。新型コロナウイルスの細胞株を培養したいオゾン機密ボックス内に、実験用の新型コロナウイルスを塗布しました。そのボックス内にオゾン発生器を稼働させて、オゾン濃度を保った状態にしてからウイルス量を測ったというものです。結果として最大1/10000まで不活化することがわかりました。しかしながらあくまでこれは環境の整った実験室での結果ですので、普段生活する広い部屋でドアの開け閉めがあるなかでオゾン濃度を保てるのか、空間に存在するウイルスを十分に不活化できるのかについてはまだまだ検討の余地があり、この結果だけで実用性を証明するのは難しいと考えられます。全く効果がないと言うわけではなさそうですが、今後の研究を注目したいところですね。

●重要な対策換気の効果とは

手軽にできる換気について見ていきましょう。換気の効果に関してどのような報告があるのでしょうか。

最近の研究では3つの「密」が重なった空間では、感染者する確率がおよそ18.7倍になると言われています。したがって、3密の構成要素の一つである密閉状態を無くす換気については、一定の効果があることは間違い無いと言えます。しかしながら、どれだけの空間に、どれだけの換気をすれば有意に感染率が下がるのかについては、十分なエビデンスはありません。換気方式に関しては、厚生労働省の発表でオフィスや商業施設では一人当たり30m3/h の換気量が確保されていれば換気の悪い密閉空間には当たらないとされています。しかしながら通気の良い屋外のBBQなどでもクラスターは発生しているため、換気だけでは感染を防ぎ切ることはできません。手洗いやうがい、マスクを徹底すれば完全に感染を防げるというような万能な対策はないのです。
一つ一つの感染対策をしっかりやっていくことが重要と言えるでしょう。

●まとめ

今回は、空気清浄機や換気について見ていきました。どちらも一定の有効性はあると考えられますが、当然ながらそのほかの対策を疎かにしてしまうと感染の可能性がむしろ上がってしまいます。私たち一人一人が日々の生活の中でできる感染対策をしっかりと行っていくことが重要と言えるでしょう。

呼吸器内科医 扇谷知宏

呼吸器内科医呼吸器内科医

監修/扇谷知宏

所属/日本内科学会 日本呼吸器学会